成年後見制度でも売れない空家

親が認知症になっても、成年後見制度を利用すれば親の不動産売れるよ。という話はよく聞きますよね。でも、そう簡単なものでもないということをご理解いただきたいと思います。

認知症の親の不動産を売却するには重要な要件があります。「不動産を売らなければいけない正当な理由が必要である。」ということです。

生活費+生活補助の費用

認知症になったから通院してます。買い物に行けないケガをしたからヘルパーさんに来てもらってます。介護施設に入ります。となるとそれなりのお金がかかります。私の両親のケースでは、通院は数千円/月、ヘルパーさんは2~3万円/月、介護施設は7~8万円/月でした。

私の場合は、親の通院・ヘルパーさん・介護施設のそれぞれの支払いは親のお金を使って私がやっていました。親のお金の管理は自然な流れで子供がやるんですよね。みんなそうですよね。介護関係の契約などもすべて私がやっていました。老健なんか1か所に3か月しかいられないから、しょっちゅう契約だ、引越しだ、なんて地獄みたいな日々でした。

でもそこで、親の貯金が全然無ければどうしましょう。こんな苦労してる私が払う? いや、姉貴もいるし折半? いやいやこの実家売っぱらえばいいじゃん。という状況になります。

そういう場合は、司法書士事務所などに飛び込んで「成年後見人の申し立てしたるわ!」とお願いすればよい方向に向かうでしょう。すでに介護施設に入っていて、家に戻ってくる可能性が限りなく低いという状況であれば迷うことは無いでしょう。不動産という資産をお金に換えて、それで生活補助の費用を捻出することができるようになります。お子さんの手続きや精神的負担もある程度減るだろうと思います。

でも、「親の貯金がある程度あって介護費用などに当面困らない。」という場合は、「不動産を売らなければいけない理由」とはならないのです。そうすると裁判所の許可が出なくて「不動産は売れない」ということになるんですね。

そうなると結局、無人の実家は放置状態が続きます。

空家が増え続ける理由

生活費や介護に関する費用を捻出できる貯蓄のある方が認知症になって、介護施設に入所して実家が無人になると、その無人の実家(不動産)は、売却するすべがない。ということです。

不動産を所有している高齢の方は、それなりの貯金を持っているのだろうと思います。お金に困って成年後見制度を利用して実家を売却することをするお子さんは、そんなに多くはないんじゃないでしょうか?

親御さんに貯金が無くて実家を売却したいという状況であれば、お子さんもお金に困っているというケースも結構あるのでしょう。そうすると、実家を売却した後に入ってきたお金をお子さんが不正に利用してしまうというケースが多く出てきてしまったという実績があると言われています。

だから裁判所はあまり肉親を成年後見人に指定しなくなってしまったということです。そうすると、専門職の成年後見人に支払う報酬が発生する。不動産を売却しても残るお金は減る一方。だったら申し立てしても損するだけじゃん。という「成年後見人制度」自体が負のスパイラルに陥ってるみたいですね。

制度自体の見直しをすべきなんじゃないかなーと素人ながらに思います。専門家の方、勝手なこと言ってすみません。

今の日本はそんな状況です。高齢者が認知症になって、売却できない「無人の実家」が増えるのは、現状致し方ないのでしょう。

空家特措法などもできましたが「所有者が認知症になってから相続が発生するまでの間」の空家に関しては、今の法制度では対応できていないという状況ではないでしょうか?

でも、そこで私が個人的に非常に良いと思うのが「家族信託」の制度です。別の投稿で詳しく解説しますのでそちらもご覧ください。